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はぴはろ♪


季節は秋、じきに寒さが厳しくなろうかと言う10月の末日。
銀髪のガンスリンガーの青年は普通より大分遅い朝食、…兼昼食を終えて、寒さとは無縁の布団の中でさて二度寝に入ろうかというところだった。
そこへ。

「とりっく・おあ・とりーとっ」

どすーん、ぎしぃっ。
これはベッドの悲鳴。

「ぐえ!!」

こっちはガンスリンガーの悲鳴…否、うめき声。
それもその筈、うつぶせ状態で寝転んでいたガンスリンガーの腰の上には、可愛らしい金髪のアコライトの少年がちょこんと座っている。
しかも先刻の音から察するに、なかなかの勢いで飛び乗った様子である。

「ぐは…っ、お、おま…」
「えっへへ〜♪」

一言文句を言ってやろうと上半身を捻りながらガンスリンガーが振り返ったが、当の加害者は呑気な笑顔だ。
その上、じゃれる様にそのままガンスリンガーの上に寝転ぶ様に抱きついてきては怒るものも怒れない。

「油断大敵だよ♪」
「…まさか部屋で寝ていて上から錘が降ってくるとは思わないだろ」
「む、そんなに重くないってば!」
「あー、まぁ確かにお前は細っこいけど。…思いっきり抱いたら折れそうだよなぁ、こことか」

言いながらガンスリンガーはアコライトの腰を撫でた。
不意打ちにそんな所を撫でられて、少年の体が跳ねる。

「きゃぅっ…!ちょ、ちょっと、いきなり撫でたらくすぐったいってばっ」
「油断大敵、なんだろ?」
「…意地悪!」

ぷぅ、とアコライトがむくれるのをガンスリンガーは面白そうに眺めて、それからすぐに、

「悪ぃ悪ぃ、そうむくれるなって」

やっぱり笑いながらだが、そう言ってアコライトの髪をくしゃくしゃと撫でた。
ガンスリンガーの指が髪に絡んでくる感触に、どこかくすぐったそうにアコライトがはにかんだ様な笑顔を見せると、ガンスリンガーは満足した様に抱き寄せて、額にキスを落とした。
それからふと思い出した様に、

「…あ、そういえば今日ハロウィンだったんだな」
「うん、そうだよ♪ さっき外見てきたんだけど、みんな楽しそうだったよー!」

町の雰囲気に飲み込まれたのか、自分自身が楽しくて堪らないという顔でアコライトが言うのを見て、
お前の方がよっぽど楽しそうだけど、と言う言葉をガンスリンガーは飲み込んだ。

「ふーん、…まぁ俺には関係ないけど」
「え!ハロウィン嫌い?」
「嫌いじゃないけど…今は眠い」
「もう、いつもそうじゃない」
「それにあれは夜が本番だろ?」
「そうなの?」
「そうだよ、お化けの仮装するんだから夜だろ」
「そっか…」

少し残念そうにアコライトが呟く。
どうやら今すぐにでも二人で出かけようと思っていた様だ。

「そんな顔するなよ、夜には付き合ってやるから」
「ほんと!?」

欠伸交じりにガンスリンガーが言った言葉にアコライトは嬉しそうにガバ、と飛び起きた。
そのままガンスリンガーの隣ではしゃいでいる。
それからはたとして、

「あ、じゃぁとりあえずこれだけでも」
「ん?」
「トリック・オア・トリート♪
 夜はみんなにお菓子貰うから、今一番真っ先に君に貰おうっと♪」
「え"っ」
「何その声…ひょっとして持ってないとか?」

…祭りは夜だしその時でいいやと思っていたとは口が裂けても言えない。
ガンスリンガーはさり気なくアコライトから眼をそらしたつもりだったが、彼にはばっちりバレバレだった様だ。

「…まぁ、そんな事だろうかと思った!
 夜までに間に合えばいいや、でしょ?あたり?♪」

ぎくり。
完全にバレてしまっている。
これでは隠しても仕方がないとガンスリンガーはあっさり白旗をあげた。

「…アタリ」
「えへへ、だいせーかいー♪」

やけに楽しそうにアコライトがブイサインをして見せた。
それから、

「じゃあ、悪戯だっ♪」
「ちょっ…」

マジで?
言いたいが言えない。目がホントにすると言っている。

「んーと、何がいいかなぁv」

再度加害者に回ろうとしている少年は無邪気な顔で悪戯を考えている。
まぁ可愛い悪戯レベルのものだろうとは思うのだが、やはり悪戯されると思うと何か落ち着かない。

「あ、そーだ!あれがいいかもー♪」

程なくして、どうやら何か閃いた様子でアコライトはポンと手を打った。
条件反射的にガンスリンガーがギクリと構えるが、アコライトは相変わらず楽しそうだ。
膝立ちで枕もとの方まで歩いて行ったかと思うと、ベッドの再度にある小さな引き出しをごそごそと漁って何かを取り出すとすぐに戻ってきた。

「じゃーん!」
「…お菓子?」

アコライトが持って来たのは、箱に入ったお菓子だった。
箱には古木の枝クッキーとかいてある。
要するに細い棒状のシガレットクッキーで、全体の八割にチョコレートがかけてあり、なかなかの人気を誇っているようだ。
ちなみに略称はコッキーらしい。なんとなく不味そうな響きである。

「うん、君も好きでしょ?」
「…まぁ、それなりに」

確かに嫌いではないが、何故それが罰ゲームになるのかと言う所にはガンスリンガーはまだ至らない。
それを見越しているらしくアコライトは箱の中からお菓子の子袋を取り出すと一本を口に咥えた。

「はい♪」
「…ん?」

はい、とお菓子を咥えたままアコライトがガンスリンガーの方へ顔を突き出した。
それでもまだ分からない様子のガンスリンガーに、…否、顔色を見るに何となく察しているらしいガンスリンガーに、無邪気な少年が最後通告をした。

「コッキーゲームって知ってる?」

にっこり。
笑顔で告げたアコライトにガンスリンガーの顔色が変わった。
コッキーゲームと言うのは今では廃れた遊びなのだが、要するにコッキーの端と端を二人で咥えてそのまま食べていくという内容だ。
最終的に、最後まで食べれば唇が触れることになるという、説明するほうが恥ずかしいゲームである。

「ちょ…なんでそんな罰ゲームなんだ!?」
「だって、普通にやろうって言ったら絶対イヤって言うでしょ?」

にっこり。
その笑顔に邪気はない。…筈だ。

「前にそういうゲームがあるって聞いた事があってねー♪」
「………」

ぶんぶん。
聞きたくない。ガンスリンガーは耳に手を当てようとするが、耳に手を当てられない様に素早くアコライトが抱きついた。

「一回やってみたかったんだけど…きっと嫌がりそうだったから」
「あ、当たり前だ!そんな今更な遊びが出来るかっ」
「いっつもいっぱいちゅーするクセに」
「あれは普通だ。恥ずかしくないだろ」
「じゃあコレも恥ずかしくない♪」

笑顔でアコライトは咥えなおしたお菓子を指差した。
一瞬ほだされかけたガンスリンガーだったが素早く我に返って、

「…いや、絶対普通にキスするより万倍は恥ずかしいし!!」
「えっちな事より?」
「当然!」
「…………」

きっぱりはっきりと言い切ったガンスリンガーにアコライトは項垂れた。
しょんぼり、といった体で、先刻から馬乗り状態になっていたガンスリンガーの上からゆっくりと降りると、そのまま背を向けてベッドも降りようとしている。

「おい?」
「もーいいよ、強要しない」

しまった、嫌がりすぎただろうか。
いやでもそんな今更な遊びが恥ずかしい事ぐらい分かってくれ。
お前ももっと大人になったらわかるから!!
…反省しているのかしていないのか分からないようなガンスリンガーの叫びは勿論アコライトには聞こえていないわけだが。

「そのかわり」
「?」
「もー絶対ちゅーさせてあげない」
「なっ」

ずがーん。
それは困る!と言うよりも早く、第二撃。

「誰か他の人とやってこようかな、コッキーゲーム」

ぽつり、と呟いた言葉にガンスリンガーが勢いよくベッドから飛び起きてアコライトの肩を掴んだ。
そのまま勢いに任せて振り向かせると、素早く少年の咥えているコッキーに口をつける。
ぽきっ。
当然そんな事をすれば真っ二つなワケで意味が無いのだが、取り敢えずはそのコッキーを口の中で処理してガンスリンガーは、

「…っ他の誰かとやらせるぐらいなら俺がやるに決まってんだろ!」

その言葉に、咥えていたコッキーをベッドの上に落としてアコライトは嬉しそうにガンスリンガーに飛びついた。

「えっへへー、わぁい!きっとそー言ってくれると思った♪」
「…おい、まさか計算か…?」
「僕だって、他の誰かとそんなのしたくないよ?」
「む…」
「君とだから、したいんだよ」

にっこり笑顔でそんな事を告げられては、怒るに怒れない。
やはり自分はこの少年にはどうも弱い、と思いながらもこれは惚れた弱みなのか、とガンスリンガーは項垂れた。

「…じゃあ、あらためて」

そう言ってアコライトは新たにコッキーを咥えなおしてガンスリンガーに顔を向けた。
そのまま、ベッドの上に胡坐をかいているガンスリンガーの膝に手を乗せて、四つんばいの体勢で見上げる。

「…………」

くそ、普通にキスするなら簡単なのに。
やたらと照れてしまうのは、普通のキスをスローモーションでするようなものだからだろうか。
いつもなら、近いと思う間もなく触れてしまうから、気付かないのかもしれない。
大切な人を間近に感じて、吐息の触れる距離で見詰め合うなんて、それが一番照れくさいのだ。

それでも、それがこの少年を愛おしく思う証なら、と。
ガンスリンガーは小さく深呼吸をしてから、アコライトが咥えたコッキーに唇を添えた。
この短い距離がたまらなく遠く、辿り着くまでの時間がいやに長く感じられる。

目の前には、嬉しそうに少しはにかんで頬を染める顔が見える。
唇が触れるか触れないかと言う所で、もどかしい距離を埋める様にガンスリンガーはアコライトの腰を抱き寄せた。

そして、二人の距離が零になる。
甘いチョコの匂いと、大切な恋人の感触と、色々が回ってまるで甘い毒の様だとガンスリンガーは思った。

そっと唇を離すと、赤い顔でアコライトが笑っていて、

「…、や、やっぱり、なんだか少し照れくさいね」
「だろ?」
「うん、…なんか凄くドキドキした」
「俺もすげー緊張した」
「ふふ、御揃いだ」
「…だな」

静かに応えて、ガンスリンガーは再びアコライトに口付けた。
少し驚いた様に一瞬アコライトの体が強張ったが、すぐに強張りは溶けて自分を抱きしめる恋人を抱きしめ返した。
四つんばいでガンスリンガーの膝の上に手を付いていた体勢から、いつしか膝を跨ぐように座って口付けを返せば、啄ばむような口付けがまた返ってくる。
そのまま二人は深く口付けを交わして、ひとしきりそうした後に、ガンスリンガーがポツリと呟いた。

「…あー…やば」
「ん?」
「お前、挑発するなよ」
「しっ、してないよ!」
「いーや、してる。その体勢がしてる」

言われて改めて今の自分の体勢に気がついてアコライトは耳までを赤く染めた。
慌てて膝から降りようとするが、ガンスリンガーの腕がそれを許さない様に抱きしめる。

「そんな慌てて逃げなくても」
「だ、だってっ」
「だーいじょうぶだって。夜までまだ時間あるからヘーキヘーキ」
「さっきまで眠いって言ってたくせにっ」
「いやもーバッチリ眠気覚めた。しっかり起きてるぞ、色んな意味で」
「え…えっち!」
「えっちで結構♪…イヤならやめるけど?」
「……イヤって言わないって分かってて言う」
「そんな事ないって」

言いながらガンスリンガーが口付けると、アコライトはそれを合図にする様に逃げるのをやめて口付けを返した。
賑やかな街の喧騒も、最早二人には届かないだろう。

…その後二人が夜のお祭りに出られたのかは、神のみぞ知る。






+++あとがき+++

しつこくもハロウィンSSを二本目。
前回のが酷い出来だったなと言う反省だったんですが、今回もゴホゴホ。
今回は名前無しでのSSでした。感情移入しにくいといった方すみません。
宵風と朱鷺の方は糖度が足りなかったので、こちらは糖度高めに。
ラブラブは描いてて恥ずかしくもあり楽しくもありです。

こちらも宜しければお持ち帰りください♪
配布は11月中旬あたりまでと思います^^

報告は任意ですが、サイト様で展示していただける際にはここで拾ったという旨を明記の上でお願い致します^^