──────これは、夢だ。

そうだ、夢だ!夢なんだ!!
それも、とびっきりの悪夢。
そうに違いない。

…そうでなきゃ、こんな事があるはずが無い。

…お願いだから誰かこれは悪夢だって言ってくれ…



Oh!My Sweet!



ある穏やかな昼下がり。
俺は今、プロンテラよりも南東に位置する島─────通称・ポリン島に来ている。
ポリン島というのは、その名の通りポリンやポポリンといったポリン類のみが生息する島の事で、
よくノービスや一次職になったばかりの少年少女の育成光景なんかを見かける。

…念のために言っておくが俺はノービスでもなければ一次職でもない。
立派なクリエイター…二次職であるアルケミストの更に上位の職業である。
つまり俺自身はこんな場所に用事は無い。
まぁ、エンジェリングやデビリングといった中ボス目的に来る上位職の奴らは居るが、
俺はといえば極製薬だからな…かえりうちだな…(遠い目

話がずれたが、兎に角俺の用事はそれらではない。
なら何故こんなところにいるのかといえば──────

「めぇ」

俺の足元で、動物の鳴き声。
そこへ目線を向ければ、小さな白い塊がちょこんと俺に寄り添っている。
頭には一対の黒く曲がった角。

なでなで、と撫でてやると気持ちよさそうにもう一度鳴いて、頭を俺の掌にこすり付けてくる。
もっと撫でてくれ、と言う合図だ。

どこからどう見ても、子羊にしか見えないソレは、正確にはホムンクルスと言う。
アルケミスト、そしてクリエイターのみが扱えるペットのようなモノで、
様々な姿をした奴が居る。

人型に近い「リーフ」、
ゼリーのような形態をした「バニルミルト」、
鳥に良く似た「フィーリル」、
そして、羊に良く似た姿をした「アミストル」。

現在確認されているのはこれらの4種類で、更にこれらの亜種がいるらしい。
それぞれに得意不得意や性格付けといった個性があるが、
卵──エンブリオという───から生まれるのは一体のみで、どれが生まれるかはランダム。
そして俺の元で生まれたのがこいつ、羊のような「アミストル」という訳だ。

ホムンクルスというのはそれらを総称した名称だが、「小さな人」という意味があるらしい。
…その言葉の通りに小っこい人間とかが出てこなくて良かった。
もしもそうなら今頃俺は卒倒していることだろう…。

なぜなら。

俺が大の人間嫌いだからだ!
昔っから他人と言うものが苦手だったが、それがそのまま成長した結果がこれである。
小さな頃から本が友達の少年は今や立派な人間嫌いの製薬クリエイター。
根暗だなんだ、恨みを買ったら呪われるだとかと陰で言われているようだが、まぁどうでも良い。
付き合うつもりの無い人間に何と言われようがどうでもいいしな。
他人に気を遣う暇があれば研究に精を出すほうがよっぽど建設的だ。

そんな俺が唐突にホムンクルスを作ってみようと思ったのは、…まぁ気まぐれだったのかもしれない。
クリエイターにもなって、本当に今更だ。
とはいえ、ソロでの狩りもそろそろ辛いレベルまで来ているのだし。
…なんだよ、クリエイターになったら経験値3倍もいるとか有り得ねぇだろ!?
先刻も言ったが俺は極製薬だ。どこまでも極製薬だ!!
まぁ早い話が、作ったのは気まぐれだったが連れようと思ったのは経験値の為だ。
まさか一から育てなきゃならんとは思わなかったが。

本当は攻撃タイプのバニルミルトやフィーリルが良いと思っていたのだが…
生れ落ちたアミストルは存外に可愛く、何より大人しい。
よく考えれば攻撃的なじゃじゃ馬を慣らすのは骨が折れそうだし…
…別に可愛さに負けたわけじゃないんだからな!?
いざって時に盾にするにも防御が得意なアミストルが都合よかったってだけの話だし!!
そうそう、俺はIntもあるから後ろから魔法剣で詠唱するにもいいしな!
って、誰に言い訳してるんだか…orz

「よし、アストル。行くぞ、ポポリン喰え」

アストルと言うのが、俺のホムの名前だ。
名前を考えるのが面倒だったんでアミストルを適当にもじっただけだが。

俺が一発殴って、アストルがそれを食べる。
それを延々繰り返し…
それでもやっとレベルが16。

ああ、なんて気の長い話なんだ…
俺がこいつと狩りに出れるのはいつの話やらorz

「めぇ」
「はいはい、おつかれ」

ため息を付く俺に擦り寄ってきたアストルを撫でてやる。
…まぁ、たまにはのんびりしてるのも良いか…
最近ずっと研究室に篭りっきりだったし。
狩りに出ても明るい場所には行ってなかったしな。
たまには太陽の下と言うのも悪くないかもしれない。


 + + +


「そろそろ、帰るか」
「め」

小さく返事をしたアストルを抱きかかえると、俺は蝶の羽を使い、
研究室…兼、自宅のあるアルデバラン郊外へ。
…ちょっと危ないんだけどな、この辺り。
その代わり近くに民家もないから、実験はやり放題だ。

「飯…面倒だな…」
「…めぇ…」

俺が呟くと、足元で悲しそうな声がする。
自分も餌がもらえないと思ったのか。

「心配しなくてもお前にはやるって…
 喰わなきゃ死ぬだろ、お前」

こいつが生まれてから今日で一週間。
俺もすっかり動物に話しかける人間に成り果てたな…

用意してあったジャルゴンを掌に乗せてしゃがむと、
アストルは嬉しそうにそれを食べ始めた。
…なんでも、ホムンクルスにやる餌は主人が直接手でやらなければならないらしい。
しっかし、ジャルゴンなんてうまいのかねぇ…
俺達人間からすれば堅いだけの石にしか見えんがホムンクルスと言うのは歯が頑丈なんだな…

それをすっかり食べ終えるとアストルはペロペロと俺の手を舐める。
「もっとくれ」って事か。

「もうないぞ」
「…めぇ」

心なしかションボリした声。
…、

「ああ、もう一個だけあったな」
「めぇv」

ごそごそと、もう一つ出してやるとアストルが嬉しそうに鳴く。
べ、別に負けた訳じゃないぞ。
明日も頑張ってもらうためだからなっ

ぺろ。
ジャルゴンをアストルが俺の頬を舐めてきた。

「うわ、急に舐めるなっ」
「めー♪」

ありがとう、って事か?
ホムンクルスとはいえ動物だからな…まぁ喋れないから身体で表現なのは分るが…
突然舐められるのはどうも慣れない。
嫌なわけではないが、こう…ビクッとするというか。
…誰かに好意を示されるのはどうにも慣れないせいか、照れくさいものだ。
って、何を言ってるんだか俺は…

「アストル、俺は研究室行くから先に寝てろ」
「め?」

軽く頭をぽふぽふ、と撫でて俺は立ち上がった。
研究室はここの地下にある。
やりかけのがまだ色々あったな…

トントン、と階段をゆっくり下りればそこに研究室の扉。
無駄に頑丈に出来ているのは、万が一を想定しての事だ。
薬品を扱うわけだから変なものができたらこの場所ごと密閉して放棄するなり出来るように、だ。
あと爆発物もあるからな…ある意味研究室は逆シェルターとも言える。

「…って」
「めー♪」

気が付くとアストルが付いてきていた。
足元で嬉しそうに鳴いている。

「ここは危な…」
「…めぇ…?」

うっ。
何だかウルウルと見つめられている様な気がする。
いや、そんなのは俺の気の迷いだ、気の迷い…!!
…、

「…大人しくしてるんだぞ」
「めー♪」

アストルが嬉しそうに俺の足元でくるくる回る。
あああどうしてこう…!
俺って動物に弱い人間だったのか!?orz

…兎に角っ
気を取り直して研究再開だ…

昨日混ぜた薬品は…これか。
うん、いい色になってる。
あとはコレの反応を調べて…

ああ、あっちのヤツも要るんだったか。
…なんだこれ、凄い色だな…

まぁとりあえず、試験管立てに両方さしておくか…

「おーい、アストル。その辺のもの弄るな、…よ!?」

って、しまったっっ
アストルのほうを向いた瞬間に、試験管立てに肘がぶつかる。
止める間もなく足元に落下する薬品…

あああああ、やらかした…!!
先刻の「いい色」の薬品と、「凄い色」の薬品がバッチリ足元で混ざり合う。
試験管は特別製で頑丈なのが幸いして割れてはいないが…
って、変なガス出てるし!
ピンクのガスっていうのはどうなんだ!?
慌てて袖で口元と鼻を覆い、あまり呼吸をしないようにする。

アストルを抱え、研究室を出て扉を硬く閉めると俺は思いっきり深呼吸をした。
酸欠で死ぬ死ぬ…っ
アストルは俺の腕の中でじっとしている。
多分、よくわかっていないんだろうな。
換気扇を回してあるから…
あの小さな部屋なら20分もすれば換気がされるだろう。
ちなみに換気扇は頭上、足元、中間あたりの三つの高さに二個ずつある。
発声したガスの重さが空気よりも軽いとは限らないからだ。

はぁ、試験管立てひっくり返すなんて久しぶりにやらかした…
ため息を付いていると、

「めぇ」

アストルがぺろりと俺の頬を舐める。
…慰めてるつもりなんだろうか。
別にそこまで落ち込んじゃいないんだが。

「はいはい、ありがとうな」
「めー♪」

礼を言って頭を撫でるとアストルは上機嫌で全身をこすりつけてくる。
大人しいのは良いことだと思ったが、それ以上に甘えたがりなのかもしれない。
ふわふわの毛並みがなんだか気持ちよくて暫しぼんやりと戯れてみる。
存外悪いものでもないな…


 + + +


「っし、アストル。行くぞー」

そろそろ十分に換気されている頃だろう。
アストルと扉の前で戯れていたら20分どころか30分以上経っているような。
そっと扉を開くと、室内に特に変わった様子は伺えない。
換気も十分な様で、ほっとして室内に足を踏み入れる。
先刻の液体はまだ足元に零れたままだが、ピンクのガスはもう出てはいなかった。

「…なんだこの色…」

虹色!虹色ですよちょっと!
なんで薬品が混ざってだけでそんな色にっ!?
なかなか珍しい話だ…
事故だったとはいえ、少し興味があるな。
幸い床はタイル状だから、スポイトを使えば簡単に採取できるだろう。
下手にカーペットなんか敷いたら掃除が面倒くさいと思ったのが幸いしたな。
スポイトどこに置いてたかな…
って!

「こらアストル、舐めるな…っ!!」
「め?」

止めたときにはもう遅い。
アストルは、ばっちり…怪しげな虹色の薬品を舐めた後だった。

「ぎゃーーーアストル、はけっ!いや、水をいっぱい飲ませるべきなのか!?」

こういう時はどうするんだったか!?
兎に角アストルを抱きかかえていつも試験管なんかを洗っている流し台の蛇口を捻る。
吐くのは難しいだろうから兎に角薬品を薄めてみるしかっっ

「飲めアストルっっ」

アストルを小脇に抱えたまま、片手で水をすくって口元へつける。
ペロペロとゆっくり舐めるのを見ていると、もうホースを突っ込んで飲ませてやりたくなる!
急げアストル、変な薬だったら死ぬって自覚無いだろお前!?

ああ、そうだ、先刻の薬の有毒性とか調べないと…っ
広めの流し台にアストルを置くと、

「アストル、ちょっとそこで水飲んでろっ」

水は出しっ放しで指示して俺は先刻の薬品の元へ。
スポイトスポイト…っ
本当に床がタイルでよかった!
手近な試験管にそれを全て移し取り、そこから少しずつ取り出して様々な反応を見てみる。
あれと、それと…っ
兎に角、毒性の強いものからチェックを入れてみるしかない。
だが、幸いにもどれにも適さないようだ。
ほっと胸をなでおろす。
が、変な薬品であることに変わりは無い。
今の所どんな作用が働くのかも未知数だ。

「アストル」
「めぇv」

…元気だ。
普通に元気だな。
流し台の上から俺を見つめている。
とはいえ、一度アストル自身の検査をしてみたほうが良いのかもしれない。

きゅ、と蛇口を捻って水を止めると俺はアストルを抱きかかえた。
ここに検査の為の設備は無い。
明日にでも生物学に詳しいやつの所へ行って見るほうがいいだろう。
そう思い、とりあえずWisで知っているやつに声をかけてみた。
苦手分野である生物学をカバーするために唯一連絡を取っているアルケミスト。
少し驚いた風だったが、準備をして待っている、と言ってくれたことに胸をなでおろす。

ていうか俺もなんでこんな必死こいてるんだか。
たかだか生まれて一週間やそこらのホムンクルス相手に…
ちら、とアストルを見ると、アストルは心細げに「めぇ」と鳴いた。
…なんかココロを読まれているような心境だ。

「…見捨てないっての」

呟いてアストルを抱きしめてやる。
一週間そこらで情がうつってしまうとは…不覚。
いや、抱き心地がいいからだきっと!うんうん。

そのまま今日は研究室を後にした。

シャワーを浴びて寝室に戻ると、アストルはベッドの上で丸まっていた。
わざわざ隣にこしらえてやったアストルの寝床は乱れた形跡も無い。
…こいつはご主人様のベッドをなんだと…

そんな事を思いながらベッドへもぐりこむと、それに気が付いたのかアストルが擦り寄ってきた。
まだ起きていたのか。
俺の胸元へ、腕の中へ収まろうとするアストルを受け入れてやると、ほっとした様に再び丸まる。
それを抱き枕代わりに、俺もゆっくりと眠りへと身を投じた…


 + + +


穏やかな眠りに異変が起きたのは、朝方の事だった。
まだ薄暗い部屋の中。
俺の腕の中で震えているアストルに気付いて俺は目を覚ました。

「おい…アストル?」

まさか先刻の薬品の影響か…!?
クソッ、やっぱり何か悪性の反応が出たのか?!
そもそもホムンクルスは通常の生物とは造りが異なる…
普通は大丈夫でもホムンクルスも大丈夫であるとは限らないじゃないか!
クソッ、早く気付くべきだった…っ

「しっかりしろ、今…っ」

弱々しく鳴くアストルに、俺は慌てて身を起こした。
そして次の瞬間俺は信じられない光景を目にする…

「…め、ぇ…」
「…え…」

小さくアストルが鳴いた、と思うと。
その姿がどんどん変わっていく…!?
身体の毛が抜け落ち、少しずつ大きくなってゆく。
それに伴い、足が太く、長くなっていく。
俺はただ、それらを呆然と見守るしかなかった。

そして。

アストルに変化が始まって10分も経たないうちに、
その姿はすっかり変わってしまっていた。

おいおい、ちょっと待てよ…
これじゃどっからどう見ても…

羊には見えない。
見えないどころか。

「…、ぅ…」

ベッドに丸まっていたソレが、ゆっくりと身を起こして座る。
やや内股気味だな。
いやそんな事どうでもいい!
これじゃ丸っきりっ…

人間じゃないか!?

どこからどう見たって人間の子供にしか見えない。
金の短い巻き毛、くりんとしたハニーブラウンの瞳。
違うといえば頭に黒い角が生えているくらいで。
素っ裸の人間の少年が、俺のベッドにちょこん、と股を閉じて座っていた。

「…ぅ、あ…」

少年が、俺に手を伸ばす。
その手が、俺の手をしっかりと掴んでいるが…
俺は呆然とそれを見ているしか出来なかった。

…あ、ありえないだろ!?
なぁ、これってドッキリか!?
それとも夢か?!
そうだ、夢だよな!?俺さっきベッドに入ったし!!
変な夢だって、絶対!!ていうか悪夢!?

っつか、これって凄い危ない光景!?
俺のベッドの上に素っ裸の子供。
俺 The 危ない人!?
いやいやいやいや現実逃避してる場合じゃない…っ
問題はソコじゃない!!

ぎゅむ。

とりあえず頬をつねってみる。
…痛い。

「ご、ご、…」

少年が何かを言いたそうにしている。
そして、先刻から握ったままになっている俺の手をくいくい、と引っ張っていた。

「…、なんだ」

これは夢、夢…
痛かったけど、夢なんだ!
自分に言い聞かせながら少年の方に顔を寄せてやると。

「ごしゅ、じんさま、イタイイタイ、ダメ…なのです」

たどたどしい喋りぶりで、少年が言う。
それから。

ぺろり。

!!?!?

少年が、俺の頬を舐めた。
バッ!と手を振り払って頬を押さえる。

「な、な…っ」
「ごしゅじん、さま?」

少年が首をかしげた。
そこ不思議そうにする所と違ーーう!!

いや、落ち着け、パニックになってはいけない…。
頭を整理してみよう…。
いや、まずはコイツに色々と聞きたいことを…

「…、少年」
「?」

きょとん、と少年は俺を見る。

「まず第一に、お前は何処から来たんだ。
 それからココで寝ていた羊はどこにいったんだ…?」
「…、えっと、僕…なのです」
「はい?」
「羊、アストル、僕なのです」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

「そんな訳ねぇだろ、羊が人間になる訳がない!!」
「ホント、なの、ですよ」
「あああ言うなああああ!!」

いや、見ちゃったんだけど!!
羊が人間になるところ…っ
それでも嘘だと思いたいんだ思わせてくれ!!
なぁそこらの神さんとやら!
俺は信じちゃいないけどさ!科学者だから!!
でも知ってるんだろ、俺が人間嫌いなの!?
それでこの仕打ちか?!
俺の羊を返せ…っっorz

すり。

気が付くと、少年が俺に身体を摺り寄せてきていた。

「ごしゅじんさま、ごめんなさい…」
「…え」
「僕が、こんな事になったから、怒ってる…ですよね」

しょぼん、と少年がうなだれる。
まだたどたどしい口ぶりだが、先刻よりは少しマシになった気がする。

身体を摺り寄せてくる癖。
何かあると甘えたように舐めてくる癖。
本当は分っているんだ、認めたくないだけで!!

「…アストル?」
「はい」

名前を呼べば、答えてじっと俺を見る。
こいつはやっぱり、アストル…なのか…
認めたくはないが、そうなのだと認めなければ一向に話が進まない。

「…、怒っては無いから」

ため息を付いて、頭を撫でてやる。
ふわふわとした髪の感触に、羊だった頃を思い出しながら。

アストルは、ソレを聞いてぱっと顔を輝かせた。

「…っ、良かったのです…っ」

がばっ
少年、…いや、アストルが俺に嬉しそうに飛びついてきた。

「おい、飛びつくな!?」
「えへへ、嬉しいのですっ」

ぎゅー。
勢いで思いっきりベッドに押し倒された状態の俺はどうしたものやら。

…っていうかコレ他人に見られたら死ねる!!
危なすぎる光景だコレは…っっ
人間の姿をしてる自覚を持ってくれアストルっ!?

そんな俺の心を知ってか知らずか、アストルは俺の顔を舐めてくる。
甘えているときのアストルの癖だ。
いやいやいやいや人間の姿でそれはマズいから!!!

その時。

「アストルちゃぁーーん!!」

ばーん!
勢い良く寝室の扉が開け放たれた。
同時に、一人のアルケミストが飛び込んでくる。

ピンクの髪をした、その男アルケミストは、

「…ちょっと、アストルちゃんが大変な時にナニやってるの!?」

まっ、と口元に手を当てる。…小指が立ってるぞ、おい。
このアルケミスト改めカマケミストめ。

って!!
見られたのかこの光景を!!?
そんな事に今更気付く。

「ちょ、アストルっ、どけ!」
「にゃっ」

慌てて身を起こし、アストルを脇にどける。

「誤解するなよ!?コイツがアストルなんだ!!」
「そんな訳ないでしょ、冗談言ってる場合っ?」

分っている。自分で言いながらも非現実的なんだから。
そうしてカマケミストの誤解を解いている間に太陽はサンサンと顔をだしたのだった…