硝子の檻
-Side A-


あの日舞い込んだ花びらが
今でも僕のそばにあるのは

きっと、見えない檻に
僕がそっと閉じ込めたせいなのでしょう。

誰にも奪われないように
そっと、そっと小瓶に入れて

そうと気付かれないように
そっと、そっと蓋をして

そうして僕が
この手の内に抱きしめているせいなのでしょう。

誰よりも君の傍に。
けれど決して触れることの無い様に。

そっと透明の中へと閉じ込めているせいなのでしょう。

嘘を重ねて
小さな小瓶をもうひとまわり大きな瓶へと閉じ込めて。

本当の君を閉じ込めて
都合の悪い事は全て小さな小瓶の中へ閉じ込めた。

だから

どんなに抱きしめても
それは君ではなく。

僕が抱きしめるのは
偽りの君。

「君」を抱きしめることを許された僕は
もう、どこにも存在なんてしていない。

だから

どんなに抱きしめたくても
本当の君に手が届くことの無い様に。

だけど

君が僕から逃げてしまわぬように。
そっと、そっと小瓶に閉じ込めたまま。

いつまでも
その小瓶を胸に抱いて。

壊れぬように。
拒まれぬように。

それでも小瓶は少しずつ
けれど確かに崩壊を始める日が来るのでしょう。

僕が偽りを抱くほどに。
僕の黄金が輝くたびに。

その日が来た時

その時 は

きっと



それでも

僕は・・・


 「        」