硝子の檻
-Side B-



最後に見たのは、君の色。

紅に染まる黄金と、光る黄金の瞳と。

煌く白銀の中に、一瞬輝く雫は
透明だと思っていたけれど…

本当は、美しく紅が宙を舞っていたのでしょう。

暗転する視界に
消える貴方の姿。

次に目覚めて
視界に移ったのは、
嗚呼、誰より愛おしい貴方でした。

目覚める私を見て複雑な顔で笑う貴方に
突然に、そう突然に。
私は急に恐怖を覚えるのです。

そうして私は、
あなたに、

「    」

視界に移ったのは
驚愕の表情?安堵の表情?
戸惑い揺れる瞳に

あの時から、そう、私は。
貴方の透明の中に自ら居るのです。

貴方が
私に合わせて吐く嘘を
嘘と知りながら

私にはこの小さな檻が
心地よくてたまらないのです。

貴方の作る透明の檻に自ら入り
貴方に気付かれぬ様、
そっと、そっと。
小さな小さな檻へと自らを閉じ込めて。

貴方は私が大人しく檻に居るので安心しているのでしょう。

けれど、その檻は透明なのです。
本当は全て見えていることを
貴方も知っているのでしょう?

閉じ込めたつもりでしか無い事を
貴方も知っているのでしょう?

…嗚呼…

けれども、自らの罪悪に潰されそうに痛む
狡く卑怯な、この私は。

…この身を。

そうして、貴方には気付かれぬように
穢れない仕草を心がけては
何事も無かったかのように微笑うのです。

背徳と罪悪と少しの後悔を胸に抱いたまま
貴方の隣で微笑うのです。

いつか壊されるこの檻の中で
今だけは
貴方の傍に居たいばかりに
狡く卑怯な、この私は。

只、微笑うのです。
全ての嘘を隠し通すために。

貴方を、

*わせたことさえも

決して

気付かれぬように